「ボーンブロス 危険性」で検索すると、鉛の話が必ず出てきます。
骨に蓄積した鉛が、煮込むことでスープに溶け出す——。不安になった方も多いと思います。
この話の出どころは、2013年に発表された1本の論文です。この記事では、その論文を実際に確認し、その後に何が分かったのかまで、順を追ってご説明します。
- 「危険」の出どころは2013年の論文1本です
- ただしこの論文はサンプル数4の小規模なもので、批判もあります
- 2017年により大規模な研究が行われ、リスクは最小限と結論づけられました
- 鉛より現実的に注意すべきなのは、塩分と自家製の衛生管理です
- both.では第三者機関で重金属検査を実施しています
なぜ「骨に鉛が溜まる」と言われるのか
まず、話の前提から整理します。
鉛は、体がカルシウムと間違える
鉛は自然界に広く存在する重金属です。土壌、水、空気、ほこりを通じて、人も動物も日常的に微量を取り込んでいます。
問題は、体が鉛をカルシウムと勘違いすることです。カルシウムと似た性質を持つため、骨に運ばれて蓄積されていきます。人間も動物も、この点は同じです。
骨に鉛が蓄積するなら、その骨を長時間煮込んだスープには鉛が溶け出すのではないか。この仮説から、話が始まりました。
発端となった2013年の論文
2013年、英国の研究チームが『Medical Hypotheses』という雑誌に論文を発表しました。
有機飼育の鶏を使い、3種類のスープと対照群の鉛濃度を測定しました。水道水、調理器具、加熱時間はすべて同じ条件です。
| 検体 | 鉛濃度 |
|---|---|
| 皮と軟骨のスープ | 9.5 μg/L |
| 骨付き鶏のスープ | 7.01 μg/L |
| 骨なし鶏肉のスープ | 2.3 μg/L |
| 対照(水道水のみ) | 0.89 μg/L |
Monro JA, Leon R, Puri BK. Med Hypotheses. 2013;80(4):389-390.
骨付きのスープは、水道水の約8倍。この数字が「ボーンブロスは危険」という話の根拠になりました。
ただし、この論文には注意点があります
論文を実際に読むと、いくつか気になる点が出てきます。
1つめ。サンプル数が4です。
各条件1検体ずつ、合計4つの測定結果しかありません。研究チーム自身も、これを「小規模なパイロット研究」と位置づけています。
2つめ。掲載誌の性格です。
その名のとおり「医学的な仮説」を扱う雑誌です。データによる裏づけが十分でない段階の主張も掲載されることがある、という位置づけの学術誌です。
他の研究者がこの論文を引用する際にも、「この文献は通常とは異なる性格の雑誌に掲載されたものである」と但し書きを添えている例があります。
論文そのものが間違っているという意味ではありません。ただ、確定した事実として扱うには、根拠として弱いということです。
その後に分かったこと
2013年の論文が話題になった後、いくつかの検証が行われました。
検証1|そもそも安全基準を超えていなかった
指摘されたのは、測定値そのものの評価です。
この研究で測定された鉛濃度は、米国環境保護庁(EPA)が定める飲料水の安全上限を下回っていました。
Chris Kresser による指摘
「水道水の8倍」と聞くと多く感じますが、そもそも比較対象の水道水が非常に低い値です。8倍になっても、飲料水の基準内に収まっていました。
検証2|別の団体が検査したら、検出されなかった
米国のWeston A. Price財団が独自に検査を実施しました。牧草飼育の牛骨から作ったスープを、2013年2月14日に検出限界10ppb、3月1日に検出限界5ppbで測定したところ、いずれも鉛は検出されませんでした。
The Weston A. Price Foundation(2013)
同じ「ボーンブロス」でも、結果がまったく違いました。
検証3|より大規模な研究が行われた
そして2017年、台湾の研究チームがはるかに大きな規模で調査を行いました。
3セットの対照実験を実施し、調理時間・酸性度・骨の種類・動物種という4つの要因が金属の溶出にどう影響するかを検証。市販のボーンブロス製品3種類も測定しました。
結論:鉛やカドミウムといった重金属の摂取に伴うリスクは最小限である。1食あたり数μgの範囲にとどまるため。
Hsu DJ, Lee CW, Tsai WC, Chien YC. Food & Nutrition Research. 2017;61:1347478.
2013年の論文がサンプル数4だったのに対し、こちらは条件を統制した対照実験です。信頼性の水準が違います。
なぜ、結果が分かれたのか
ここが、この話でいちばん重要な部分かもしれません。
鉛が検出されたスープと、されなかったスープがある。その違いは何なのか。
答えは「どんな骨を使ったか」
鉛は、鶏や牛が生きている間に環境から取り込み、骨に蓄積したものです。つまり——
骨に含まれる鉛の量も違う
2013年の論文には、使用した鶏がどこでどう育ったのかについての詳しい記載がありません。「有機飼育」とだけ書かれています。
この点について、検証側からは「鉛に汚染された環境で育った鶏を使った可能性があるのではないか」という指摘が出ています。
ボーンブロスという料理そのものが危険なのではなく、原料となる骨の由来こそが本質だということです。
私がこの記事で伝えたいのは、「安全だから気にしなくていい」ということではありません。
むしろ逆で、骨の由来を気にしてくださいということです。
ボーンブロスは、動物が一生かけて蓄えたものが出てくる料理です。良いものも、そうでないものも。だからこそ、どこで育った、どんな骨なのかが決定的に重要になります。
「危険性」を調べてこの記事にたどり着いた方の感覚は、間違っていないと思います。その疑問を持つこと自体が正しい。
both.の場合
私たちも、第三者機関で重金属検査を実施しています。
both.が使用しているのは、国産の鶏骨のみです。
さらに現在、鶏の生育環境や飼料の改善につながる取り組みを、専門家とともに始めています。原料の品質は、作った後で管理するものではなく、育つ段階から決まるものだと考えているからです。
鉛より、現実的に注意すべきこと
ここまで鉛の話をしてきましたが、実際にはもっと身近な注意点があります。
1|塩分
市販のスープ類は、塩分が高めのものが少なくありません。ラーメンやうどんのつゆを全部飲めば、それだけで1日の目標量の7割前後に達します。
ボーンブロスを毎日飲む習慣にするなら、1杯あたりの食塩相当量を確認してください。
※参考までに、both.Soupは1杯0.4g(一般的な味噌汁は約1.2g)です。
2|自家製の場合は衛生管理
ご自宅で作る場合、長時間の加熱と、その後の保存方法に注意が必要です。
常温で放置すると細菌が増える危険があります。作ったら速やかに冷やし、冷蔵または冷凍で保存してください。鉛より、こちらのほうが現実的なリスクです。
3|体質・持病による個人差
ボーンブロスは食品ですが、体質や持病によっては注意が必要な方がいます。
以下に該当する方は、事前に医師にご相談ください。
・塩分制限を受けている方
・腎機能について指導を受けている方(タンパク質・カリウム・リンの制限がある場合)
・鶏肉、魚など原材料にアレルギーのある方
・妊娠中・授乳中の方で、食事に指導を受けている方
・その他、治療中の方
4|「好転反応」という説明には注意
飲み始めて体調に変化があったとき、「好転反応です」と説明されることがあります。
ただし、好転反応という現象に確立した科学的根拠はありません。体調が悪くなったら、それは単に合わなかったか、別の原因があると考えるべきです。
「良くなる過程だから続けてください」という説明を受けたら、いったん立ち止まってください。合わないものは、やめていいのです。
選ぶときに確認したい4つのこと
ここまでを踏まえて、ボーンブロスを選ぶときの基準をまとめます。
| 確認すること | なぜ大事か |
|---|---|
| 骨の産地 | 鉛は育った環境に由来します。産地が明記されているか |
| 検査の有無 | 第三者機関の検査結果を公開しているか |
| 原材料表示 | 何が入っているか。添加物の有無 |
| 食塩相当量 | 毎日続けるなら、1杯あたりの量を確認 |
逆に言えば、これらが公開されていない商品は避けたほうが無難です。公開できない理由があるのかもしれません。
ボーンブロスの危険性に関するよくあるご質問
ボーンブロスに鉛は含まれていますか?
骨の由来によります。2017年の対照実験では、市販製品の鉛は1食あたり数μgの範囲で、リスクは最小限と結論づけられています。both.では第三者機関で重金属検査を実施しています。
毎日飲んでも大丈夫ですか?
重金属の観点では問題ないと考えられます。ただし塩分は製品によって差があるので、1杯あたりの食塩相当量を確認してください。
子どもや妊婦が飲んでも平気ですか?
一般的な食品ですのでお召し上がりいただけます。ただし食事について指導を受けている場合は、事前に医師にご確認ください。
自家製と市販、どちらが安全ですか?
どちらが優れているとは一概に言えません。自家製は原料を自分で選べる反面、衛生管理の責任も自分で負います。市販品は検査体制が確認できるものを選ぶことが大切です。
長く煮込むほど危険になりますか?
2017年の研究では、8時間を超える加熱でカルシウムやマグネシウムの溶出が増えることが示されています。ただし重金属についても、リスクは最小限という結論でした。
飲んだ後に体調が悪くなりました。
「好転反応」として片づけず、いったん中止してください。アレルギーや体質に合わない可能性があります。症状が続く場合は医療機関にご相談ください。
まとめ
- 「危険」の出どころは、2013年のサンプル数4の論文です
- 測定値は飲料水の安全基準を下回っていました
- 別の団体の検査では鉛は検出されませんでした
- 2017年の対照実験では、リスクは最小限と結論づけられています
- 本質は調理法ではなく、骨がどこで育ったかです
- 鉛より、塩分・自家製の衛生管理のほうが現実的な注意点です
- both.では第三者機関で重金属検査を実施しています
「危険性」を調べてこの記事にたどり着いた方に、最後にお伝えしたいことがあります。
疑問を持つのは、正しいことです。体に入れるものについて調べるのは、当たり前の行動だと思います。
私たちにできるのは、聞かれる前に情報を出しておくことだけです。この記事も、そのつもりで書きました。
ボーンブロススープの基本については、こちらでまとめています。
本記事は、ボーンブロスに関する一般的な情報提供を目的としたものであり、医学的なアドバイス、診断、治療を提供するものではありません。体調に不安のある方、治療中の方は、医師にご相談のうえお召し上がりください。
参考文献
- Monro JA, Leon R, Puri BK. The risk of lead contamination in bone broth diets. Medical Hypotheses. 2013;80(4):389-390.
- Hsu DJ, Lee CW, Tsai WC, Chien YC. Essential and toxic metals in animal bone broths. Food & Nutrition Research. 2017;61:1347478.
- The Weston A. Price Foundation. Bone Broth and Lead Contamination: A Very Flawed Study in Medical Hypotheses. 2013.
- Kresser C. Bone Broth and Lead Toxicity: Should You Be Concerned?
ボーンブロス専門店が徹底してこだわったボーンブロススープの概要はこちら↓

